『図説 英国メイドの日常 増補版』もう少し内容紹介
1904年に使用された絵葉書 |
『図説 英国メイドの日常 増補版』2023年1月に無事に発売になりました。ピンク枠デザインの初版が2011年、クリーム色の「新装版」が2018年発売です。今回は「増補版」として8ページコラムが増えています。購入の際にはご注意ください。(ISBNを確認されるとよいかも)
村上 リコ 著
単行本 A5変形 ● 152ページ
ISBN:978-4-309-76322-4 ● Cコード:0339
発売日:2023.01.27
1890年代ごろの名刺版写真(カルト・ド・ヴィジット) |
19世紀から20世紀初頭のイギリスでは、働く女性の大多数を住み込み家事使用人が占めていました。つまり女性家事使用人は、そのときその場で「いちばんふつうの女性」であったはずですが、あまり顧みられることもなく、むしろメディアや社会全般からは軽蔑される存在でした。そんな彼女たち「メイド」の日常生活と心情を再構築することを目標に書いた本です。
1893年の家庭雑誌の挿絵 |
同時代の雑誌の挿絵や、風刺画、ポストカード、個人的に撮影された写真などをぎっしり300点以上収録しています。
1883年に贈られたごほうびの本の口絵。本に夢中になり、先輩に叱られる |
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さまざまなタイプの図像を集めました。たとえば、教会の日曜学校に通う女の子に贈られた、小さな「ごほうびの本」。可愛らしい挿絵ですが内容はたいへんお説教じみていて、身の程をわきまえてまじめに働けよ、という道徳物語ばかりです。
メイドやコックといえば、正面玄関の横の階段から警官やら配達人やらなんやかや地下のキッチンに引き込んで飲食させていちゃつきがちだから気をつけろ……という雇い主目線のお決まりのイメージがありました。ただし、絵葉書の文面を読んでみると「エプロンを送ってくれてありがとう」「お母さんによろしく、また会いましょう」などと書いてあったりもするので、メイドたち自身が使っていたのかもしれません。想像がふくらみます。
彼女たちの目線に寄り添い、想像力をはたらかせながら書くことを心がけました。初めての単著で、あれから12年たちましたが、気持ちは変わっていないつもりです。よろしければ読んでみてください。
※初版からの増補分は2010年から放映された英国時代劇ドラマ『ダウントン・アビー』のメイドについて書いた8ページのコラムです。