『図説 英国メイドの日常 増補版』もう少し内容紹介

クリスマスのメッセージが書かれた絵葉書。家の中につながる戸口に立っている制服姿のメイドと、外の壁に手をつきながら郵便を手に持っている青い制服の配達人。2人の間の地面に郵便袋(GPO)が置かれている
1904年に使用された絵葉書


『図説 英国メイドの日常 増補版』2023年1月に無事に発売になりました。ピンク枠デザインの初版が2011年クリーム色の「新装版」が2018年発売です。今回は「増補版」として8ページコラムが増えています。購入の際にはご注意ください。(ISBNを確認されるとよいかも)


『図説 英国メイドの日常 増補版』書影 暗いキッチンのなかで左端にピンクの服を着たメイド、その右に立つ青い服のメイドが右側の半分開いた格子窓の下に並んだ三羽のハトに手を伸ばしてエサをあげている

図説 英国メイドの日常 増補版

村上 リコ 著

単行本 A5変形 ● 152ページ

ISBN:978-4-309-76322-4 ● Cコード:0339

発売日:2023.01.27

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黒っぽいハイネックの服に白いエプロンとキャップを付けたメイドらしき2人の女性。左の女性は立っていて右の女性は着席。1890年ごろの名刺版写真より
1890年代ごろの名刺版写真(カルト・ド・ヴィジット)

 19世紀から20世紀初頭のイギリスでは、働く女性の大多数を住み込み家事使用人が占めていました。つまり女性家事使用人は、そのときその場で「いちばんふつうの女性」であったはずですが、あまり顧みられることもなく、むしろメディアや社会全般からは軽蔑される存在でした。そんな彼女たち「メイド」の日常生活と心情を再構築することを目標に書いた本です。

大きなトレイに乗せた食器を運ぶメイド。1893年の雑誌挿絵
1893年の家庭雑誌の挿絵


 同時代の雑誌の挿絵や、風刺画、ポストカード、個人的に撮影された写真などをぎっしり300点以上収録しています。

 

小さな帽子をかぶりエプロンをした若い女性が応接間で本を読んでいる19世紀の木版画の挿絵。
1883年に贈られたごほうびの本の口絵。本に夢中になり、先輩に叱られる

帽子をかぶり杖を持ったスーツ姿の男性が箱型のトランクを背負い、ボンネット姿で荷物を持った少女が歩いている19世紀の木版画。
ごほうびの本の扉絵。父とともに初めての職場に向かう

 さまざまなタイプの図像を集めました。たとえば、教会の日曜学校に通う女の子に贈られた、小さな「ごほうびの本」。可愛らしい挿絵ですが内容はたいへんお説教じみていて、身の程をわきまえてまじめに働けよ、という道徳物語ばかりです。

 
あごの下くらいの高さの鉄柵ごしに手を握り合うメイドと帽子をかぶった男性。メイドは盆を手に持っている。
1869年『パンチ』風刺漫画

"The path of duty is the path to the pleasure." Anon.という見出しのついた絵葉書。レンガの塀に沿って歩いてくる小太りのヴィクトリア時代の警官。塀の内側に隠れて少し低くなった階段に立つ女性料理人がビールとプディングを載せた盆を持って笑顔で様子をうかがっている
1908年に送られたコミック絵葉書


 メイドやコックといえば、正面玄関の横の階段から警官やら配達人やらなんやかや地下のキッチンに引き込んで飲食させていちゃつきがちだから気をつけろ……という雇い主目線のお決まりのイメージがありました。ただし、絵葉書の文面を読んでみると「エプロンを送ってくれてありがとう」「お母さんによろしく、また会いましょう」などと書いてあったりもするので、メイドたち自身が使っていたのかもしれません。想像がふくらみます。


描き割りのシダ植物の背景を前に、左手前の木の柵に片手をかけたメイドの肖像写真
とても古い鉄板写真(ティンタイプ)の肖像


 彼女たちの目線に寄り添い、想像力をはたらかせながら書くことを心がけました。初めての単著で、あれから12年たちましたが、気持ちは変わっていないつもりです。よろしければ読んでみてください。

※初版からの増補分は2010年から放映された英国時代劇ドラマ『ダウントン・アビー』のメイドについて書いた8ページのコラムです。





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