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『図説 英国執事』新装版発売中

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図説 英国執事 新装版 村上 リコ 著 単行本 A5変形 ● 152ページ ISBN:978-4-309-76277-7 ● Cコード:0339 発売日:2019.01.21 楽天ブックスで購入 / amazonで購入 / 紀伊國屋書店で購入  19世紀後半から20世紀初頭のイギリスを中心に、貴族や資産家の家内を切り回していた、「執事」や男性家事使用人の実際の姿を描くことをめざした図説本です。 主人の影に溶け込むように立つ執事。オーチャードソン『功利的結婚』1883年 英国の典型的な執事像。『パンチ』1892年8月20日 「執事ってそもそもなんなの? 何をする人?」「何を着て、どんなところに住んで、何を食べていたの?」「出世の方法は?」「働きながら何を考えてた?」「世間からはどう思われていた?」「雇い主についてはどう思っていた?」などなどの疑問に答えています。  『図説 英国執事』目次です。  2012年に初版発行(青枠+写真の装丁)、2019年にカバーを変更した新装版となりました。2024年4月現在、この新装版が最新です。誤記をいくつか修正したのみで、本文は同じです。加筆はありません。 執事の服やフットマンの仕着せ。『陸軍海軍ストア』カタログ1929~30年 女主人と執事。『パンチ』1906年  執事の仕事を経験した人びとの書き残した自伝や評伝、歴史書を根拠として、風刺画、写真、本や雑誌の挿絵など、幅広い図像を用いて彼らの実像を探求しています。なお、「英国貴族の称号と呼びかけ方」も掲載しているので、英国時代もの、異世界ものの創作をしたい方のお役にも立つと思いますよ。    ご参考までに、以下に同書の「あとがき」を引用します。12年が経過したいま、自分の書いた文章を読み返すと、執筆当時の思いが蘇るようです。   あとがき 『図説 英国メイドの日常』につづけて、「ふくろうの本」シリーズで二冊目の本を書き上げることができました。  二冊目だから作り方もわかっているし、少しは楽にできるだろう、図版も前より少なそうだから、ちょっとページも減らしたりして――なんて思ったのが運の尽き。ふたをあけてみたら執筆期間も枚数もふくらみ、まったく目論見どおりにはいきませんでした。  ただ女を男に置き換えるだけでいいわけはない。執事はメイドの男性版ではない。いろいろな資料を読

月刊たくさんのふしぎ2023年11月号「ロンドンに建ったガラスの宮殿 最初の万国博覧会」

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月刊たくさんのふしぎ2023年11月号 「ロンドンに建ったガラスの宮殿 最初の万国博覧会」 文・村上リコ 絵・THORES柴本  福音館書店より2023年10月3日に発売されました。   1851年、ロンドンで世界で最初の万博が開かれました。その会場となったのは、鉄とガラスでできた建物、通称「水晶宮(クリスタル・パレス)」。設計したのは、貴族の家で働いていた庭師のパクストンです。建物自体が展示品とも言われた水晶宮は、開催を反対する意見を汲んだものでもありました。世界初となる万博はどのようなものだったのでしょう?    1851年にロンドンでひらかれた世界で最初の「万博」とその会場ができあがるまでのいきさつを、美しい絵とともに紹介した絵本です。文章を担当しました。絵はTHORES柴本先生。この表紙イラストがメールで届いた時の感動を思い出します。なんてこった、ゴージャスな宝箱のような、ロンドンの劇場のような……! 中のページも見ごたえがありますのでぜひお楽しみください。とっても珍しいものに色を塗っていただいたカットもありますよ。  ふだん時代考証のお仕事は1880年代~1910年代くらいの話が多いので(みんな切り裂きジャックやシャーロック・ホームズを出したい?)、1850年代の風俗や時代背景をおさらいするのはなかなか大変で、それだけに新鮮で面白い経験でもありました。よのなかには私の知らないことがたくさんあるなあ。作っているあいだに「アレッ……?」となったことがあり、それは 「ふしぎ新聞」の「作者のことば」 に書きました。編集部のブログで公開されていますので、お読みいただけるとと幸いです。  4年ほど前にお話をいただき、コロナ禍を経て、何度も手直ししながら取り組んで作り上げた1冊です。40ページと短い絵本ですが、思いをこめてがんばりました。  なお、月刊雑誌なので、オンライン書店では入荷の反応が鈍かったり、一時的に品薄や入手困難になることがあります。お近くの書店で取り寄せ注文されるか、通信販売なら ヨドバシドットコム が補充が早くておすすめらしいと風の噂に聞きました。  また、各所電子書籍ストアでは電子版も発売されます。 Kindle と 楽天Kobo と ヨドバシ と 紀伊國屋書店Kinoppy には入っているようです。  どうぞよろしくお願いいたします。

コミック版世界の伝記『エグランタイン・ジェブ』2023年4月発売

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コミック版世界の伝記(54)エグランタイン・ジェブ 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  / hontoで購入  児童向け伝記コミックの原作を担当しました。漫画は以前、同じポプラ社コミック版伝記シリーズの 『エメリン・パンクハースト』 でご一緒した瑞樹奈穂さん。監修は「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」です。  エグランタイン・ジェブは1876年のイギリスに生まれ、ヴィクトリア時代後期に教育を受けて育った女性です。 20世紀初頭の第一次世界大戦の時代、戦争の影響を受けて飢える「敵国の子どもたち」を救うため、妹のドロシーとともに「セーブ・ザ・チルドレン」という組織をつくりました。子どもの人権に関する最初の公式文書「ジュネーブ子どもの権利宣言」を起草した人でもあります。  1919年に発足した「セーブ・ザ・チルドレン」は現在も世界中で活動を続けているものの、創設者については広く知られているとはいえません。日本語の資料は少なく、何冊かの英語の伝記と周辺資料を参照しながら原作を作っていきました。  エグランタインは エメリン よりも18歳年下ですが、活動していた時代は重なり、奇しくも同じ1928年(英国で条件なしの女性参政権が実現した年!)に亡くなっています。 近い時代と場所で活動していた2人の女性の人生を、読み比べてみると面白いかもしれません。 性格や考え方、選んだ手法、目指した目標、歩んだ道のり。正反対なところもあれば、似た部分もあります。 ※4/20追記 世界で初めて「子どもの権利」を提唱し、「セーブ・ザ・チルドレン」を設立した女性の人生が学習マンガに! コミック版世界の伝記『エグランタイン・ジェブ』刊行!!/ポプラ社  PR Timesにて、目次やマンガ本編、解説記事ページや年表まで詳しく紹介したプレスリリースが公開されました。よろしければご一読ください。  お子さまにも、そうでない方にも、読んでいただけると幸いです。 コミック版世界の伝記(54)エグランタイン・ジェブ 漫画/瑞樹 奈穂 シナリオ/村上 リコ 監修/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 発売年月 2023年4月 ISBN  978-4-591-17750-1 ポプラ社 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  /  hontoで

『図説 英国メイドの日常 増補版』もう少し内容紹介

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1904年に使用された絵葉書 『図説 英国メイドの日常 増補版』2023年1月に無事に発売になりました。 ピンク枠デザインの初版が2011年 、 クリーム色の「新装版」が2018年 発売です。今回は「増補版」として8ページコラムが増えています。購入の際にはご注意ください。(ISBNを確認されるとよいかも) 図説 英国メイドの日常 増補版 村上 リコ 著 単行本 A5変形 ● 152ページ ISBN:978-4-309-76322-4 ● Cコード:0339 発売日:2023.01.27 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  /  hontoで購入   1890年代ごろの名刺版写真(カルト・ド・ヴィジット)  19世紀から20世紀初頭のイギリスでは、働く女性の大多数を住み込み家事使用人が占めていました。つまり女性家事使用人は、そのときその場で「いちばんふつうの女性」であったはずですが、あまり顧みられることもなく、むしろメディアや社会全般からは軽蔑される存在でした。そんな彼女たち「メイド」の日常生活と心情を再構築することを目標に書いた本です。 1893年の家庭雑誌の挿絵  同時代の雑誌の挿絵や、風刺画、ポストカード、個人的に撮影された写真などをぎっしり300点以上収録しています。   1883年に贈られたごほうびの本の口絵。本に夢中になり、先輩に叱られる ごほうびの本の扉絵。父とともに初めての職場に向かう  さまざまなタイプの図像を集めました。たとえば、教会の日曜学校に通う女の子に贈られた、小さな「ごほうびの本」。可愛らしい挿絵ですが内容はたいへんお説教じみていて、身の程をわきまえてまじめに働けよ、という道徳物語ばかりです。   1869年『パンチ』風刺漫画 1908年に送られたコミック絵葉書  メイドやコックといえば、正面玄関の横の階段から警官やら配達人やらなんやかや地下のキッチンに引き込んで飲食させていちゃつきがちだから気をつけろ……という雇い主目線のお決まりのイメージがありました。 ただし、絵葉書の文面を読んでみると「エプロンを送ってくれてありがとう」「お母さんによろしく、また会いましょう」などと書いてあったりもするので、メイドたち自身が使っていたのかもしれません。想像がふくらみます。 とても古い鉄板写真(ティンタイプ)の肖

『図説 英国メイドの日常 増補版』発売

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図説 英国メイドの日常 増補版 村上 リコ 著 単行本 A5変形 ● 152ページ ISBN:978-4-309-76322-4 ● Cコード:0339 発売日:2023.01.27 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入 / 紀伊國屋書店で購入  / hontoで購入  2011年に初めての単著として作った本が、 2011年の初版 、 2018年の新装版 ともに好評で在庫が少なくなり、ふたたびカバーを一新して出し直してもらえることになりました。もうしばらく書店の棚においていただけて嬉しいです。買って読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。  本文、図版については、ほんの少し誤字や誤記を直したところがありますが、基本的に初版から変わりはありません。  増量した8ページは〈『ダウントン・アビー』に見る英国メイドの日常」〉。あの英国ドラマで描かれたメイドの制服の変遷と、何人かのキャラクターの出世の道などについて書きました。ドラマの画像もふんだんに掲載してもらっています。本国放映が2010年で、この本の初版が2011年だから、もう干支がひとまわりしたなんて……時のたつのが早すぎる……。アンナにデイジー、グエンにエセル、いや、なつかしい。    引き続きよろしくお願いいたします。   ※もう少し詳しく内容を紹介したエントリも書きました。画像もたくさん載せましたのでよろしければどうぞ。

2022年10月の英国旅行

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Ickworth House  所用があって、10月後半に10日ほど英国に行ってきた。前半は同行者あり。後半はひとり旅で、ケンブリッジに2泊、ロンドンに4泊。ケンブリッジを選んだのは、いま進行中の仕事にちょっとだけ関係あるということと、 Ickworth House という長年行ってみたかったナショナルトラストのカントリーハウスに近かったから。この館については twitterでつらつらと写真を掲載していた のをいずれブログに格納するつもり。 ケンブリッジの街並み  ケンブリッジは古くてきれいで、ひとりでも過ごしやすい町だった。 16世紀のパブを改造した民俗博物館Museum of Cambridge フィッツウィリアム美術館  博物館、美術館、企画展も充実していて、コレッジの建物も見ごたえがある。2泊だけで1日は郊外にも行ってしまって全然回り切れていないので、機会があればまた泊まりに行きたい。 なつかしのナショナルシアター  しかしまさかのパンデミック国境閉鎖を経て、まる3年ぶりの英国旅行。2019年と現在は、まるで変っていなかったような、だいぶ変わったような、3年の時間が凍結されてたような。……というかこの3年、私、何してたんだっけ……?(行きたいのに行けない感情をぶつけるように、プディング作ったりパンを焼いたり、 英国歴史料理の本を翻訳 したり 監修したり していたよ!)  現地ではクレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス)がすっかり普及していた。地下鉄やバスは7~8年前から使えるようになっていたようだけど、それ以外でも、クレジットカードの使える場面はほぼコンタクトレス対応。ケンブリッジ駅前のスーパーで1か所だけ「いまコンタクトレス使えません」の手書きの貼り紙が出てたところがあったけれど、逆にそうやって断りが必要なくらい必須になっているということだろう。    バスや地下鉄といえば、以前に比べて、来る予定の便が直前キャンセルされる場面が多くなったように感じた。感染拡大時期に減便・間引き運転のニュースをよく見かけたので、ひょっとしたらそれがまだあとをひいているのかもしれない(大規模なストライキもあったよう)。今回の旅で、郊外の施設を見に行ったら、帰りのバス停がなくなっていて、遠くの鉄道駅までかなり歩くはめになったこともあれば、マップや乗り換えアプリで事前に調べ

映画『帰らない日曜日』(ネタバレあり)

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 2022年5月27日(金)から公開。  孤児のメイド、ジェーン(オデッサ・ヤング)は、雇い主の友人の子息ポール・シェリンガム(ジョシュ・オコナー)と、階級違いの関係を持っている。1924年のイギリスの「母の日(マザリング・サンデー)」、ジェーンはポールに呼び出され、二人きりの時間をすごした。彼は婚約者エマとの会食に出かけてゆき、残されたジェーンは裸のまま彼の屋敷を探索する。そして映画は、ジェーンの人生の時間を行きつ戻りつしながら、彼女が忘れられないあの一日を何度も回想し、作家としての想像力を花開かせていくさまを描き出していく。グレアム・スウィフトの小説『マザリング・サンデー』の映画化(原題は原作と同じ)。監督はエヴァ・ユッソン、脚本はアリス・バーチ。  小説を翻案するにあたり、映画は女性の視点や能動性を強く意識して作られていると端々から感じた。原作でジェーンが主人の図書室から借りて読むのは「ライダー・ハガード、G・A・ヘンティー、R・M・バランタイン、スティーヴンソン、キプリング……」そしてコンラッド。当時の少年が読むような冒険小説が主で、いまの目で見れば植民地主義的、男性的とみなされるようなジャンルだ。第一次世界大戦で命を失ったお屋敷の跡取りたちが、子どもの頃に読んでいた本を、親たちは処分しがたくそのまま書棚に残していて、それをあとから来たメイドが読みふけり、自分の人生に踏み出していく――そんな図式になっていて、時代の移ろいが本に託されている。  そして原作には、ジェーンから亡き息子たちの本を借りる許可を求められたニヴン氏が「彼女に字が読めること自体にびっくりしたのかもしれない」という表現もあった。これはまさに、1920年代に「読書するキッチンメイド」だった、お屋敷の図書室から本を借りたら「残念だけど、彼女、読むのよね、本を」と女主人に言われたという マーガレット・パウエル の回想を思わせる。そこへ映画独自の要素として、第二次世界大戦後、ジェーンはパートナーのドナルドから、フェミニズムの古典、ヴァージニア・ウルフの『自分だけの部屋』を贈られる。このタイトルは鑑賞後にも印象に残るもので、 監督の力強い意志 を感じる。 ꧁ 𝐑𝐞𝐯𝐢𝐞𝐰꧂ 美術館の絵画のように美しいラブ・シーンの数々! ―CUT(3.18発売) 映画 #帰らない日曜日 𝟓.