『図説 英国社交界ガイド 増補版』発売

 


 『図説 英国社交界ガイド 増補版 エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』

村上 リコ 著 河出書房新社

単行本 A5変形 ● 136ページ

ISBN:978-4-309-76332-3 ● Cコード:0339

発売日:2024.05.28

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 2017年に出た本に8ページ加筆し、誤記などを少し修正した増補版が発売されます。いつも読んでくださり、まことにありがとうございます。2024年5月28日ごろお店に並ぶ予定のようです。

 社交とは、人付き合いのこと。そして社交界とは、身分の高い人びとが交際する小さな社会のこと。19世紀から20世紀の英国で、「もっと上流の社交界」に入りたいという願望を抱いた中流階級の女性たちが、身につけなければならなかったエチケットはどんなものだったのか。ふるまいのルールを覚え、服装を整え、手紙を書き、カードを配り、紹介を受けて訪問し合い、本格的なパーティーに招き招かれ、もてなしもてなされ、互いを品定めし、地位上昇を狙う……。彼女たちの日常と野望を、当時の「エチケット・ブック」の記述から考えた本です。自分ならどうするか、どう感じるか、身近に感じてもらいたくて、書き方を工夫してみました。

『図説 英国社交界ガイド増補版』もくじ

 いつものように、当時の様子がわかるような同時代の雑誌の挿絵や写真、絵画、ファッション画など、さまざまな図像を紹介しています。

1862年の小さなエチケット・ブック


家政指南書の挿絵より、古風な正餐の食卓


パーティーをおいとまする場面。1901年ごろ

アスコット競馬場での社交。1910年代

 今回の増補版で、新しい章をひとつ追加しました。生まれつきすごく高貴というわけではない女性が、上流社会に「乗り込んだ」例をいくつか紹介しています。主役は産業資本家の娘、「プロフェッショナル・ビューティー」、ミュージカル女優。読んでいただけると幸いです。

 以下は「あとがき」の再録です。
あとがき

「エチケット」が苦手です。
「空気を読む」のもとても下手です。
 そんなわたしですが、たまに英国ヴィクトリア時代を舞台とした作品の制作に参加して、当時のマナー、エチケット、人どうしの距離感やふるまい方の「法則」を調べる仕事をすることがあります。そうしてわかった情報を、一冊の本にまとめておけば、いずれリファレンスブックのように使えるかも――と、そんなもくろみ(取らぬ狸の皮算用)のもと、この本の企画を立てました。
『社交界ガイド』というタイトルは編集部でつけていただいたものです。この題から、華麗なる上流社会のすべてがわかる、貴族とつながりがあったりする「ハイソサエティな」人が書いた本……を想像してお求めになった方がいたとしたら、ご期待を裏切って申し訳ありません。わたし自身は王侯貴族や社交界などまるで縁がなく、むしろ現実世界では、階級社会に疑問を抱いているほうです。
 エチケットは苦手です。
 どうしてそんなに苦手なのか、この本と向き合って、少しわかった気がします。人付き合いに暗黙のルールがあること。その、ひとつひとつのルールを決めているのは誰なのか、よくわからないこと。ルールがひとり歩きして様式化していくこと。客観的に見ることができれば面白い現象ですが、なんというかこう、社会のルールを理解できず、「空気を読めず」、きまりの悪い思いをした過去のあれこれがよみがえり、執筆にはいつも以上に時間がかかってしまいました。関係各位にはご迷惑をおかけしました。
 マナーは大切だよ、思いやりだよ。人生を豊かにするよ、という考えの方にも、わたしのようにエチケット全般が苦手な人にも、この本が、何かを考えるきっかけになってくれれば幸いです。

二〇一六年一二月 村上リコ

↑↑↑ここまで。 

 8年前、2016年の秋に書いた本です。映画俳優のベン・ウィショーさんのファンになって、周辺情報を熱心に追いかけていた当時、イギリスでもアメリカでも性差別反対運動が高まっていくのを感じていました(本が出た2017年の年明けには『未来を花束にして(サフラジェット)』の公開を待ちながらネット越しにウィメンズ・マーチを見たのを覚えています)。具体的な時事ネタが書いてあるわけではないのですが、この本を読み返すと、やはりあのときあの瞬間の世界の空気や、私の問題意識があちこちに出ているように感じます。どうかな。伝わるかな。

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