投稿

『ダウントン・アビーのコスチューム』

イメージ
『ダウントン・アビーのコスチューム』 著者:エマ・マリオット/翻訳 村上リコ ホビージャパン社 ISBN:9784798634951 出版年月日:2024/8/23 楽天ブックス  /  amazon  /  紀伊國屋書店  / ヨドバシドットコム  日本でもファンの多いイギリス制作の海外ドラマ『ダウントン・アビー』。これまで放送されたテレビシリーズ6作と劇場版2作に登場した衣装を徹底解説。登場人物の描写、物語の展開、世界観への重要な役割を、劇中の図版や貴重なオフショットを交え豪華ハードカバー書籍で紹介します。登場人物たちが着用した昼間の服や夜の正装、仕事着や特別な場面の服、そしてウェディングドレスなどを掲載。鮮やかな写真と衣装デザイナーの貴重な談話を交えて、ユニークな衣装の数々を蘇らせます。  『ダウントン・アビー』の忘れがたい名場面、絢爛たるエドワード朝期から活気あふれる1920 年代までのファッションの流行、そして本物の衣装デザインスケッチ。すべてが収録されたこの1冊は、番組ファンのみならずイギリス文化を愛するすべての人におすすめです。〈書誌情報より〉   翻訳を担当しました。大きくて重くて美しい本に仕上がりましたよ。 グランサム伯爵夫人コーラのコート 伯爵の長女メアリーがファッションショーを見に行く場面の衣装  貴族の奥方や令嬢たちのドレスが大きな美しい写真で満載。時代によるファッションの移り変わりや、シーズンごとの出来事によるキャラクターの内面の変化、それにより彼女たちの外見がどのように変わっていったかが時系列に沿って解説されています。 次女イーディスのデザインスケッチと母娘三人の王妃への訪問場面  第5シーズンから劇場版2作品の衣装デザイナーをつとめたアンナ・メアリー・スコット・ロビンズ氏によるスケッチ画も収録されています。外国語堪能な担当編集者さんの力を借りて、手書き文字の解読と翻訳、がんばりました! 先代伯爵夫人バイオレットの衣装解説  もちろん若い女性のファッションだけではなく、『ダウントン・アビー』シリーズの象徴的存在であるバイオレットや、イザベル、ロザムンドたちの服装にもきっちりページが割かれています。登場人物の存在感が互いに引き立てあうように考えられているんですね。 キツネ狩りの場面のファッション紹介 グランサム伯爵ロバートの服装  貴族の日

『図説 英国社交界ガイド 増補版』発売

イメージ
    『図説 英国社交界ガイド 増補版 エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』 村上 リコ 著 河出書房新社 単行本 A5変形 ● 136ページ ISBN:978-4-309-76332-3 ● Cコード:0339 発売日:2024.05.28 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  2017年に出た本に8ページ加筆し、誤記などを少し修正した増補版が発売されます。いつも読んでくださり、まことにありがとうございます。2024年5月28日ごろお店に並ぶ予定のようです。  社交とは、人付き合いのこと。そして社交界とは、身分の高い人びとが交際する小さな社会のこと。19世紀から20世紀の英国で、「もっと上流の社交界」に入りたいという願望を抱いた中流階級の女性たちが、身につけなければならなかったエチケットはどんなものだったのか。ふるまいのルールを覚え、服装を整え、手紙を書き、カードを配り、紹介を受けて訪問し合い、本格的なパーティーに招き招かれ、もてなしもてなされ、互いを品定めし、地位上昇を狙う……。彼女たちの日常と野望を、当時の「エチケット・ブック」の記述から考えた本です。自分ならどうするか、どう感じるか、身近に感じてもらいたくて、書き方を工夫してみました。 『図説 英国社交界ガイド増補版』もくじ  いつものように、当時の様子がわかるような同時代の雑誌の挿絵や写真、絵画、ファッション画など、さまざまな図像を紹介しています。 1862年の小さなエチケット・ブック 家政指南書の挿絵より、古風な正餐の食卓 パーティーをおいとまする場面。1901年ごろ アスコット競馬場での社交。1910年代   今回の増補版で、新しい章をひとつ追加しました。 生まれつきすごく高貴というわけではない女性が、上流社会に「乗り込んだ」例をいくつか紹介しています。主役は産業資本家の娘、「プロフェッショナル・ビューティー」、ミュージカル女優。読んでいただけると幸いです。  以下は「あとがき」の再録です。 あとがき 「エチケット」が苦手です。 「空気を読む」のもとても下手です。  そんなわたしですが、たまに英国ヴィクトリア時代を舞台とした作品の制作に参加して、当時のマナー、エチケット、人どうしの距離感やふるまい方の「法則」を調べる仕事をすることがあります。そうし

テレビアニメ『黒執事 寄宿学校編』の時代考証を担当しています

イメージ
https://www.kuroshitsuji.tv/  テレビアニメ『黒執事 寄宿学校編』で「時代考証」のお仕事をしています。原作は 枢やなさんによる人気コミック で、テレビシリーズとしては4度目のアニメ化だそうです。  2024年4月13日より放映が開始されました。TOKYO MXなど地上波テレビのほか、数多くの配信サイトで見ることができますので、 公式サイトでチェックしてみてください 。  第1期(2008)と第2期(2010)に、アニメ会社の依頼で参加し、ちょっと間をおいて、劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』(2017)からまた呼んでいただいています(なお、1期と2期のときはシナリオを何本か書く機会を得たり、ファンブックやアニメ雑誌にいろいろ書き物をしたりもしましたが、今回は考証のみです)。  また、原作チームのほうにも、アニメ2期が終わったタイミングの2012年(話数でいうと第66話)から「アドバイザー」として参加し、現在に至ります。ちょうどいまアニメ化されている部分のストーリーが始まる直前に加わったので、懐かしいやら、時の流れの早さを感じるやら。  アニメの制作にあたって何をしているかといいますと、シナリオ会議に参加して時代背景や当時の生活文化のあれこれをご説明したり、絵コンテを確認したり、作画・設定用の説明資料や画像資料をご用意したり、いろいろです。 レドモンドが座ってるソファの質感を拡大して見てほしい https://t.co/gVV12AraZ7 — 村上リコ (@murakamirico) April 20, 2024 今回の製作陣はとりわけ素材と質感にこだわる方たちだなぁと思います https://t.co/8kGvH1Uowe — 村上リコ (@murakamirico) April 20, 2024  よろしくお願いいたします。

『図説 英国執事』新装版発売中

イメージ
図説 英国執事 新装版 村上 リコ 著 単行本 A5変形 ● 152ページ ISBN:978-4-309-76277-7 ● Cコード:0339 発売日:2019.01.21 楽天ブックスで購入 / amazonで購入 / 紀伊國屋書店で購入  19世紀後半から20世紀初頭のイギリスを中心に、貴族や資産家の家内を切り回していた、「執事」や男性家事使用人の実際の姿を描くことをめざした図説本です。 主人の影に溶け込むように立つ執事。オーチャードソン『功利的結婚』1883年 英国の典型的な執事像。『パンチ』1892年8月20日 「執事ってそもそもなんなの? 何をする人?」「何を着て、どんなところに住んで、何を食べていたの?」「出世の方法は?」「働きながら何を考えてた?」「世間からはどう思われていた?」「雇い主についてはどう思っていた?」などなどの疑問に答えています。  『図説 英国執事』目次です。  2012年に初版発行(青枠+写真の装丁)、2019年にカバーを変更した新装版となりました。2024年4月現在、この新装版が最新です。誤記をいくつか修正したのみで、本文は同じです。加筆はありません。 執事の服やフットマンの仕着せ。『陸軍海軍ストア』カタログ1929~30年 女主人と執事。『パンチ』1906年  執事の仕事を経験した人びとの書き残した自伝や評伝、歴史書を根拠として、風刺画、写真、本や雑誌の挿絵など、幅広い図像を用いて彼らの実像を探求しています。なお、「英国貴族の称号と呼びかけ方」も掲載しているので、英国時代もの、異世界ものの創作をしたい方のお役にも立つと思いますよ。    ご参考までに、以下に同書の「あとがき」を引用します。12年が経過したいま、自分の書いた文章を読み返すと、執筆当時の思いが蘇るようです。   あとがき 『図説 英国メイドの日常』につづけて、「ふくろうの本」シリーズで二冊目の本を書き上げることができました。  二冊目だから作り方もわかっているし、少しは楽にできるだろう、図版も前より少なそうだから、ちょっとページも減らしたりして――なんて思ったのが運の尽き。ふたをあけてみたら執筆期間も枚数もふくらみ、まったく目論見どおりにはいきませんでした。  ただ女を男に置き換えるだけでいいわけはない。執事はメイドの男性版ではない。いろいろな資料を読

月刊たくさんのふしぎ2023年11月号「ロンドンに建ったガラスの宮殿 最初の万国博覧会」

イメージ
月刊たくさんのふしぎ2023年11月号 「ロンドンに建ったガラスの宮殿 最初の万国博覧会」 文・村上リコ 絵・THORES柴本  福音館書店より2023年10月3日に発売されました。   1851年、ロンドンで世界で最初の万博が開かれました。その会場となったのは、鉄とガラスでできた建物、通称「水晶宮(クリスタル・パレス)」。設計したのは、貴族の家で働いていた庭師のパクストンです。建物自体が展示品とも言われた水晶宮は、開催を反対する意見を汲んだものでもありました。世界初となる万博はどのようなものだったのでしょう?    1851年にロンドンでひらかれた世界で最初の「万博」とその会場ができあがるまでのいきさつを、美しい絵とともに紹介した絵本です。文章を担当しました。絵はTHORES柴本先生。この表紙イラストがメールで届いた時の感動を思い出します。なんてこった、ゴージャスな宝箱のような、ロンドンの劇場のような……! 中のページも見ごたえがありますのでぜひお楽しみください。とっても珍しいものに色を塗っていただいたカットもありますよ。  ふだん時代考証のお仕事は1880年代~1910年代くらいの話が多いので(みんな切り裂きジャックやシャーロック・ホームズを出したい?)、1850年代の風俗や時代背景をおさらいするのはなかなか大変で、それだけに新鮮で面白い経験でもありました。よのなかには私の知らないことがたくさんあるなあ。作っているあいだに「アレッ……?」となったことがあり、それは 「ふしぎ新聞」の「作者のことば」 に書きました。編集部のブログで公開されていますので、お読みいただけるとと幸いです。  4年ほど前にお話をいただき、コロナ禍を経て、何度も手直ししながら取り組んで作り上げた1冊です。40ページと短い絵本ですが、思いをこめてがんばりました。  なお、月刊雑誌なので、オンライン書店では入荷の反応が鈍かったり、一時的に品薄や入手困難になることがあります。お近くの書店で取り寄せ注文されるか、通信販売なら ヨドバシドットコム が補充が早くておすすめらしいと風の噂に聞きました。  また、各所電子書籍ストアでは電子版も発売されます。 Kindle と 楽天Kobo と ヨドバシ と 紀伊國屋書店Kinoppy には入っているようです。  どうぞよろしくお願いいたします。

コミック版世界の伝記『エグランタイン・ジェブ』2023年4月発売

イメージ
コミック版世界の伝記(54)エグランタイン・ジェブ 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  / hontoで購入  児童向け伝記コミックの原作を担当しました。漫画は以前、同じポプラ社コミック版伝記シリーズの 『エメリン・パンクハースト』 でご一緒した瑞樹奈穂さん。監修は「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」です。  エグランタイン・ジェブは1876年のイギリスに生まれ、ヴィクトリア時代後期に教育を受けて育った女性です。 20世紀初頭の第一次世界大戦の時代、戦争の影響を受けて飢える「敵国の子どもたち」を救うため、妹のドロシーとともに「セーブ・ザ・チルドレン」という組織をつくりました。子どもの人権に関する最初の公式文書「ジュネーブ子どもの権利宣言」を起草した人でもあります。  1919年に発足した「セーブ・ザ・チルドレン」は現在も世界中で活動を続けているものの、創設者については広く知られているとはいえません。日本語の資料は少なく、何冊かの英語の伝記と周辺資料を参照しながら原作を作っていきました。  エグランタインは エメリン よりも18歳年下ですが、活動していた時代は重なり、奇しくも同じ1928年(英国で条件なしの女性参政権が実現した年!)に亡くなっています。 近い時代と場所で活動していた2人の女性の人生を、読み比べてみると面白いかもしれません。 性格や考え方、選んだ手法、目指した目標、歩んだ道のり。正反対なところもあれば、似た部分もあります。 ※4/20追記 世界で初めて「子どもの権利」を提唱し、「セーブ・ザ・チルドレン」を設立した女性の人生が学習マンガに! コミック版世界の伝記『エグランタイン・ジェブ』刊行!!/ポプラ社  PR Timesにて、目次やマンガ本編、解説記事ページや年表まで詳しく紹介したプレスリリースが公開されました。よろしければご一読ください。  お子さまにも、そうでない方にも、読んでいただけると幸いです。 コミック版世界の伝記(54)エグランタイン・ジェブ 漫画/瑞樹 奈穂 シナリオ/村上 リコ 監修/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 発売年月 2023年4月 ISBN  978-4-591-17750-1 ポプラ社 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  /  hontoで

『図説 英国メイドの日常 増補版』もう少し内容紹介

イメージ
1904年に使用された絵葉書 『図説 英国メイドの日常 増補版』2023年1月に無事に発売になりました。 ピンク枠デザインの初版が2011年 、 クリーム色の「新装版」が2018年 発売です。今回は「増補版」として8ページコラムが増えています。購入の際にはご注意ください。(ISBNを確認されるとよいかも) 図説 英国メイドの日常 増補版 村上 リコ 著 単行本 A5変形 ● 152ページ ISBN:978-4-309-76322-4 ● Cコード:0339 発売日:2023.01.27 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  /  hontoで購入   1890年代ごろの名刺版写真(カルト・ド・ヴィジット)  19世紀から20世紀初頭のイギリスでは、働く女性の大多数を住み込み家事使用人が占めていました。つまり女性家事使用人は、そのときその場で「いちばんふつうの女性」であったはずですが、あまり顧みられることもなく、むしろメディアや社会全般からは軽蔑される存在でした。そんな彼女たち「メイド」の日常生活と心情を再構築することを目標に書いた本です。 1893年の家庭雑誌の挿絵  同時代の雑誌の挿絵や、風刺画、ポストカード、個人的に撮影された写真などをぎっしり300点以上収録しています。   1883年に贈られたごほうびの本の口絵。本に夢中になり、先輩に叱られる ごほうびの本の扉絵。父とともに初めての職場に向かう  さまざまなタイプの図像を集めました。たとえば、教会の日曜学校に通う女の子に贈られた、小さな「ごほうびの本」。可愛らしい挿絵ですが内容はたいへんお説教じみていて、身の程をわきまえてまじめに働けよ、という道徳物語ばかりです。   1869年『パンチ』風刺漫画 1908年に送られたコミック絵葉書  メイドやコックといえば、正面玄関の横の階段から警官やら配達人やらなんやかや地下のキッチンに引き込んで飲食させていちゃつきがちだから気をつけろ……という雇い主目線のお決まりのイメージがありました。 ただし、絵葉書の文面を読んでみると「エプロンを送ってくれてありがとう」「お母さんによろしく、また会いましょう」などと書いてあったりもするので、メイドたち自身が使っていたのかもしれません。想像がふくらみます。 とても古い鉄板写真(ティンタイプ)の肖