コーニッシュ(ではない)パスティを作る
やってみたら意外と簡単で拍子抜けする。切ると生地はサクサクほろほろ。中身はジューシー、空気穴からあふれ出た肉汁がちょっと焦げているのが香ばしい。本来なら玉ねぎ、かぶ、じゃがいも、ニンジンなどの野菜と牛肉を生のまま角切りにして皮と一緒に焼き上げるらしいけれど、今回の中身は冷凍庫にあった調理済みの鶏ハンバーグ。コーニッシュ・パスティ「もどき」である。
パスティとは、イギリスのコーンウォール地方が起源といわれる(諸説あり)、サクサクのペイストリー生地を使った持ち運びしやすいパイのこと。錫鉱山で働く人のお弁当だったという伝説で知られる(これも諸説あり)。
ペイストリー生地はデリア・スミスのサイトを参考に作った。小麦粉(中力粉)2:油脂1、ベーキングパウダー、塩とこしょう、水、ととてもシンプル。粉と塩と油脂をディナーナイフで切るように混ぜて、できるだけポロポロのサラサラにしてから、少しずつ冷水を加えて混ぜ、丸くまとめる。どこでやめるのが正解なのかわからなくて戸惑う(ベイクオフの挑戦者がよく言っているアレをまさに体験した)けれど、あちこちのサイトや本を総合すると「十分にやわらかいけどべとつかず、丸めると形を保ち、めん棒でのばしても割れない」というところかな。皮を丸く伸ばして適当に包み、180℃に予熱したオーブンで30分ほど焼いた(中身が生なら大きさにもよるが45分~1時間30分かかるそう)。
スエット(牛の腎臓周りの脂、ケンネ脂)を使うと、中身は鶏肉でも牛肉特有のコクが加わる。皮が足りなくなってマーガリンで作り足したら、一応できたけど風味や質感が変わって、塩味のやわらかいビスケットっぽくなった。ショートニングやバターでもたぶん作れるだろう。
純正コーンウォール産のものもそうでないものも(「コーニッシュ」パスティの呼称は地理的保護制度で英国とEUで保護されているそうだ)、UKに行くとスーパーや駅の売店でどこにでも売っている。英国旅行にいくと、長時間鉄道で移動するとき必ず買う。フィリングの味付けはそんなに濃くないので、いつも「美味しい……脂っこい……醤油が欲しい……あっ持ってきてるけどスーツケースのなかだったわ……」となるまでがお決まりの儀式だ。ああ英国行きたい。
幼少のころからそこはかとなく抱いていたペイストリー生地への警戒感(絶対に難しいに違いない……!という)が少し薄れたので、今度は甘いものもいろいろ挑戦してみたい。