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『図説 英国メイドの日常 増補版』発売

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図説 英国メイドの日常 増補版 村上 リコ 著 単行本 A5変形 ● 152ページ ISBN:978-4-309-76322-4 ● Cコード:0339 発売日:2023.01.27 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入 / 紀伊國屋書店で購入  / hontoで購入  2011年に初めての単著として作った本が、 2011年の初版 、 2018年の新装版 ともに好評で在庫が少なくなり、ふたたびカバーを一新して出し直してもらえることになりました。もうしばらく書店の棚においていただけて嬉しいです。買って読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。  本文、図版については、ほんの少し誤字や誤記を直したところがありますが、基本的に初版から変わりはありません。  増量した8ページは〈『ダウントン・アビー』に見る英国メイドの日常」〉。あの英国ドラマで描かれたメイドの制服の変遷と、何人かのキャラクターの出世の道などについて書きました。ドラマの画像もふんだんに掲載してもらっています。本国放映が2010年で、この本の初版が2011年だから、もう干支がひとまわりしたなんて……時のたつのが早すぎる……。アンナにデイジー、グエンにエセル、いや、なつかしい。    引き続きよろしくお願いいたします。   ※もう少し詳しく内容を紹介したエントリも書きました。画像もたくさん載せましたのでよろしければどうぞ。

2022年10月の英国旅行

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Ickworth House  所用があって、10月後半に10日ほど英国に行ってきた。前半は同行者あり。後半はひとり旅で、ケンブリッジに2泊、ロンドンに4泊。ケンブリッジを選んだのは、いま進行中の仕事にちょっとだけ関係あるということと、 Ickworth House という長年行ってみたかったナショナルトラストのカントリーハウスに近かったから。この館については twitterでつらつらと写真を掲載していた のをいずれブログに格納するつもり。 ケンブリッジの街並み  ケンブリッジは古くてきれいで、ひとりでも過ごしやすい町だった。 16世紀のパブを改造した民俗博物館Museum of Cambridge フィッツウィリアム美術館  博物館、美術館、企画展も充実していて、コレッジの建物も見ごたえがある。2泊だけで1日は郊外にも行ってしまって全然回り切れていないので、機会があればまた泊まりに行きたい。 なつかしのナショナルシアター  しかしまさかのパンデミック国境閉鎖を経て、まる3年ぶりの英国旅行。2019年と現在は、まるで変っていなかったような、だいぶ変わったような、3年の時間が凍結されてたような。……というかこの3年、私、何してたんだっけ……?(行きたいのに行けない感情をぶつけるように、プディング作ったりパンを焼いたり、 英国歴史料理の本を翻訳 したり 監修したり していたよ!)  現地ではクレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス)がすっかり普及していた。地下鉄やバスは7~8年前から使えるようになっていたようだけど、それ以外でも、クレジットカードの使える場面はほぼコンタクトレス対応。ケンブリッジ駅前のスーパーで1か所だけ「いまコンタクトレス使えません」の手書きの貼り紙が出てたところがあったけれど、逆にそうやって断りが必要なくらい必須になっているということだろう。    バスや地下鉄といえば、以前に比べて、来る予定の便が直前キャンセルされる場面が多くなったように感じた。感染拡大時期に減便・間引き運転のニュースをよく見かけたので、ひょっとしたらそれがまだあとをひいているのかもしれない(大規模なストライキもあったよう)。今回の旅で、郊外の施設を見に行ったら、帰りのバス停がなくなっていて、遠くの鉄道駅までかなり歩くはめになったこともあれば、マップや乗り換えアプリで事前に調べ...

映画『帰らない日曜日』(ネタバレあり)

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 2022年5月27日(金)から公開。  孤児のメイド、ジェーン(オデッサ・ヤング)は、雇い主の友人の子息ポール・シェリンガム(ジョシュ・オコナー)と、階級違いの関係を持っている。1924年のイギリスの「母の日(マザリング・サンデー)」、ジェーンはポールに呼び出され、二人きりの時間をすごした。彼は婚約者エマとの会食に出かけてゆき、残されたジェーンは裸のまま彼の屋敷を探索する。そして映画は、ジェーンの人生の時間を行きつ戻りつしながら、彼女が忘れられないあの一日を何度も回想し、作家としての想像力を花開かせていくさまを描き出していく。グレアム・スウィフトの小説『マザリング・サンデー』の映画化(原題は原作と同じ)。監督はエヴァ・ユッソン、脚本はアリス・バーチ。  小説を翻案するにあたり、映画は女性の視点や能動性を強く意識して作られていると端々から感じた。原作でジェーンが主人の図書室から借りて読むのは「ライダー・ハガード、G・A・ヘンティー、R・M・バランタイン、スティーヴンソン、キプリング……」そしてコンラッド。当時の少年が読むような冒険小説が主で、いまの目で見れば植民地主義的、男性的とみなされるようなジャンルだ。第一次世界大戦で命を失ったお屋敷の跡取りたちが、子どもの頃に読んでいた本を、親たちは処分しがたくそのまま書棚に残していて、それをあとから来たメイドが読みふけり、自分の人生に踏み出していく――そんな図式になっていて、時代の移ろいが本に託されている。  そして原作には、ジェーンから亡き息子たちの本を借りる許可を求められたニヴン氏が「彼女に字が読めること自体にびっくりしたのかもしれない」という表現もあった。これはまさに、1920年代に「読書するキッチンメイド」だった、お屋敷の図書室から本を借りたら「残念だけど、彼女、読むのよね、本を」と女主人に言われたという マーガレット・パウエル の回想を思わせる。そこへ映画独自の要素として、第二次世界大戦後、ジェーンはパートナーのドナルドから、フェミニズムの古典、ヴァージニア・ウルフの『自分だけの部屋』を贈られる。このタイトルは鑑賞後にも印象に残るもので、 監督の力強い意志 を感じる。 ꧁ 𝐑𝐞𝐯𝐢𝐞𝐰꧂ 美術館の絵画のように美しいラブ・シーンの数々! ―CUT(3.18発売) 映画 #帰らない日曜日 𝟓....

トレヴァー・ヨーク『図説 イングランドのお屋敷』好評発売中

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図説イングランドのお屋敷 ~カントリー・ハウス~ 著:トレヴァー・ヨーク Trevor Yorke 訳:村上リコ 楽天ブックスで購入  /  amazonで購入  /  紀伊國屋書店で購入  ※このエントリは Seesaaaの旧ブログ から一部修正して再録したものです。  2015年に発売された翻訳書です。イングランドのカントリー・ハウスの歴史、様式、ディテールについて、中世後期から第一次世界大戦後あたりまでを網羅して解説した本で、おかげさまで2021年秋の現在も版を重ねて好評発売中です。  著者のトレヴァー・ヨークさんは、若いころから歴史的建造物めぐりが大好きで、あちこちをめぐり歩いたといいます。そんな著者自身による写真と、温かみのある手描きのイラストが添えられ、非常にわかりやすい内容になっています。  建物だけではなく、歴史と世相による住人の暮らしぶりの変化や、インテリアのディテールや、家事使用人が仕事をしていたキッチンなどの部屋の構造も、かなり詳しく図解してあります。興味のある方にはたいへんおすすめです。  発売前後の時期に、英国政府観光庁のブログに 「カントリー・ハウス訪問のすすめ」というエッセイを寄稿 しました(文中のプレゼントキャンペーンはすでに終了しています)。『図説イングランドのお屋敷』の紹介のために書いたエントリですが、それとは別に、私が現地で撮ってきた写真も掲載されていますので、よろしければリンク先で見ていただけると幸いです。ゲストエントリの役割はすでに果たしたと思うので、近いうちにこちらにも再録させてもらおうと思っています。  ヨーク氏の著書は、英国では30種類以上も刊行されています。その中で私はもう一冊 『英国のインテリア史』 も訳し、さらに中島智章先生の翻訳で 『イングランドの教会堂』 も出ています。好評であればほかの本も続けて出していけると思います。  どうぞよろしくお願いします。 図説イングランドのお屋敷 ~カントリー・ハウス~ 著:トレヴァー・ヨーク Trevor Yorke 訳:村上リコ A5判/並製/128ページ/オールカラー ISBNコード:ISBN978-4-8373-0905-5 C3071 定価:本体1580円(税別) マール社 楽天ブックスで購入 / ...

ウィショーさんと思いがけない冒険の話

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映画『クラウドアトラス』(2012年)で作曲家の家およびケアホームとして登場したOvertoun House(2013年訪問)    2012年に公開された『007/スカイフォール』をーー正確には予告動画のほんの短い登場シーンをーー見た時、ベン・ウィショー演じるQというキャラクターに掴まれた。それまでにもいくつかの作品に出ているのを見ていて、良い役者だなと思ってはいたものの、大きな衝撃を受けたのはやはりQだ(かわいい)。しかし、過去の出演作をさかのぼって鑑賞するにつれ「あれ……この経歴のなかではQはむしろ異色……なのでは……?」となっていく。けれど、それに気づいた頃にはもうすっかり「中の人」のファンになっていた。 映画『情愛と友情(Brideshead Revisited)』(2008年)が撮影されたカースル・ハワード(2014年訪問) 同、撮影に使われた Castle Howard の庭園建築「四つの風の神殿」(2014年訪問)  それからというもの、趣味と仕事の英国旅行に、映画やドラマのロケ地訪問をつけ加えて、2013年以降数年間はあちこち行った。ハマった直後にはツイート数が激増して「久しぶりに見たら村上さんの様子がおかしくなってて……」と人から言われたこともある(今はだいぶ落ち着いています)。 Peter and Alice( Noel Coward Theatre 2013年) Bakkhai(Almeida Theatre 2015年)  舞台、ドラマ、映画のあいだでほぼ等分のバランスを取りながら仕事をするタイプの人なので、ロンドンやニューヨークに舞台を見に行くようになった。思い切って足を踏み入れるとどんどん楽しくなって、近くの劇場にかかっている演劇やミュージカルにも気になったら行ってみるようにもなった(続けて見るうちにだんだん自分自身の好みがわかってきた。フェミニスト要素があり、元気な女性が出てくるもの、歴史に向き合う物語、怒りとユーモア、手作り感のある規模小さめな作品を 好きになる みたい)。  行ったことのない土地も、ジャンルごとまったく興味がなかった映画やドラマも、あまりに尖りすぎて、鑑賞後は唖然として何も心に浮かばなかった実験的な舞台もーー近ごろの言い方をするなら、誰かを「推し」ていなかったらまず見ることのなかった世界だ。どんな分野でもき...

メイドの目で見たヴィクトリア時代のインテリア[再録・後編]

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『ヴィクトリア時代の室内装飾 女性たちのユートピア』(LIXIL出版 2013年8月発行) に寄稿した文章の再録です。 前編 と 中編 はこちらです。 掃除中に起きる小さなドラマ(続き) クリノリン(スカートを膨らませる骨組)が大流行。掃除のたびに装飾品やランプを叩き落して……。「Punch」1864年。  たとえ盗まなくても、主人の持ち物に意図せず損害を与えてしまうことはあった。法律上、壊したものの代金を断りなく給料から差し引く行為は許されていなかったが、実情は違ったらしいことが元メイドの証言からうかがわれる。1920年代に老夫婦のコック=ジェネラル(料理を中心に家事全般を引き受ける使用人)をしていたバーネット夫人も罰金の思い出を語っている(Frank Dawes『Not in front the Servants』より)。痰壺を便器の上に落とし、便器を壊してしまったのだ。女主人は怒って週給を差し止め、弁償させた。しかし別のときにも彼女は、朝食のしたくをしようとして観葉植物を持ち上げたとき、鉢が「宙を飛んで」壁に激突し、2週間も給料を止められてしまったという。  壊れやすい陶器で出来たものや、ガラスケース入りの飾りもので隙間という隙間を埋めるのがヴィクトリア時代風のインテリアだ。ちょっとしたことで何かにぶつかり、落として壊すことも現代より多かったのだろう。 使用人の心境  メイドたちは自分たちの手入れする部屋を、実際のところどのように思っていたのか。つらかった仕事も、あとから振り返れば良い思い出になるのだろうか。  20世紀の初頭に貴族の邸宅に勤めたある女性は、人生でいちばん幸せだったのは、14歳から22歳まで、メイドとして働いていた時期だと語っている(Samuel Mullins & Gareth Griffiths『Cap and Apron』より)。    「この年月を私は、イングランドの貴族とジェントリーが衰退する以前の大邸宅で過ごすことができたのですから……このようなお屋敷に住み、そこにある素晴らしい宝物を眺めたり、触ったりできたのは、特権であったと感じています」  かつて栄華を極めた時代の英国で、貧しい労働者階級の家に生まれたメイドたちは、働きに出た家の豪華な内装を、まるで自分のもののように誇らしく思っていたのかもしれない。...

メイドの目で見たヴィクトリア時代のインテリア[再録・中編]

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『ヴィクトリア時代の室内装飾 女性たちのユートピア』(LIXIL出版 2013年8月発行) に寄稿した文章です。版元品切れとなり、新品では購入できなくなっているようなのでここに再録します。 前編はこちら です。2回に分けて掲載のつもりでしたが、ブログで読むには長いようなのであと1回続けることにします。 掃除中に起きる小さなドラマ   女主人たちは、自分と階級の違う少女と一つ屋根の下で暮らすことに恐れを感じていた。使用人を雇えるような裕福な家には、メイドには到底手の届かないような高価な品もある。誘惑に負けて盗みを働く使用人は少なくなかった。雇い主たちは、掃除のついでに主人の財産をくすねることがないか目を光らせていた。掃除すれば見つかるはずの場所に何かを隠し、勤勉さと誠実さを試そうとする女主人もいた。  1920年代にスコットランドでハウスメイドをしていたジーン・レニーは、このテスト法に遭遇してひどく傷ついたことを自伝に書いている(Jean Rennie『Every Other Sunday』より引用)。働き始めた初日、敷物をはがして掃除し、もとに戻そうとした彼女は、部屋の床のちょうど真ん中に半クラウン硬貨(2シリング6ペンス)が落ちているのを見つけて驚く。そのときは何の気なしに暖炉の上に置いておいた。数日後、敷物をめくったら1箱分のトランプが上向きに広げてあった。それでもまだ意図には気づかなかった。同僚のメイドに話してみたら、ひどく憤慨して、それは毎朝きちんと敷物の下まで掃除しているか調べるためだ、半クラウンの件は正直さを試されていたのだ、と教えてくれた。 「わたしはわっと泣き出してしまった。家に帰りたかった。こんなひきょうな方法で誰かにわたしの正直さを試されるなんて、侮辱よりなお悪い、とてもありえないと思った」  1906年生まれのジーンは、ヴィクトリア時代のメイドたちよりも高い教育を受けていて、自尊心も高かったらしい。やがて反撃に出る。執事の部屋へ突進していって糊を借り、コインを床に貼り付けて、カードは1枚残らず裏に向けておいたのだ。次の職に就くとき良い紹介状がもらえないかもしれないという恐れもよぎったが、結局その一件では叱られず、敷物を使ったテストも止んだ。  前述のリリアン・ウェストールも、ソヴリン金貨(1ポンド)をそこらじゅうに置きっぱなしにして彼女...